「建築が人にはたらきかけること」藤森照信著
以前ブログで紹介した建築家、藤森氏の半生や独自の建築、文明観が書かれた本が出版されました。本の題名は「建築が人にはたらきかけること」内容は、建築を生む力は神様が言葉のような実用を超えたところにある。村の信仰に守られた少年時代から今日まで。建築界の快人・藤森照信はいかにして成ったか、が書かれています。藤森氏は長野県の茅野市生まれ、この地は御柱祭りで有名な諏訪大社があります。全国諏訪神社総本社であり国内にあるもっとも古い神社の一つとされています。諏訪大社の特徴は、本殿と言われる建物がありません。代りに秋宮は一位の木を春宮は杉の木をご神木とし、上社は御山を御神体として拝しています。日本人が古くから行ってきた自然崇拝が、この地では今も根付いています。この地で育った藤森氏にとって、この環境が大きく建築の考え方の根底に影響を及ぼしています。本を読み進めると、以前訪れた神長宮守矢資料館のことが書かれていて、とても興味深い内容でした。藤森氏は守矢家が持っている貴重な古文書を収蔵する為の建物を、茅野市から相談を受けて計画が始まります。「この土地の歴史や風土をよく理解してつくらなければ神様に失礼にあたる。山の裾に広がる故郷の景色の中にモダニズム建築が建っているさまを見たくない。どう考えればいいかわかりませんでした。伝統的な民家は基本的にはやりたくない。民家の形式もそんなに古いものではないからです。でも最初は民家っぽいものを考えていました。」(本より一部抜粋)この土地の歴史や風土とは何かを調べていくと、諏訪は縄文文化の中心地でもありました。また神長宮守矢資料館に展示してある鹿の首などは、御頭祭によって捧げられたもので、この祭りは旧約聖書の中に類似点があり深い関係が垣間見れます。まさにこの地は自然を神とし、神と共に生きてきた歴史があることが分かります。この地には、精霊のようなエネルギー体であふれています。藤森氏は縄文人が見ていたであろう原風景を理解、分解、再構築し、ご神体である守屋山の精霊に応えるように設計をされたのではないかと思います。この本にはタンポポハウスなどその他多くの建築についても書かれており、この本を通じて藤森氏の建築になぜ私が惹かれるのかが、わかったような気がしました。