陰影とは、陰(光の当たらない所)と影(光がものに遮られてできる暗い部分)があり英語では、陰をshade(シェード)、影をshadow(シャドウ)として分けています。私は、情緒的な雰囲気を与える陰に落ち着きや癒しを感じます。特に天井と壁の接点や、壁と床の接点、深い軒先の奥にある暗がりなどです。陰(shade)は、影(shadow)のようなダイナミックさはありませんが、繊細で奥ゆかしく確かにそこに存在するのだと分かります。陰(shade)は影(shadow)とは違い、意図的につくり出すことは容易ではないと考えます。反射光や間接光のような粒子的で、幻想的な光のふるまいをコントロールするのが難しいからです。陰(shade)に注目して、そのふるまい方を追求していくことで、光の扱い方に対する理解がより深まります。つまり光を設計することとは、陰と影を意識して設計することであり、陰陽論と同じように対極にあるものを同時に存在させ、そのバランスを整えることが、居心地の良い空間になるのではないかと思います。
障子はとても魅力的な存在だと思います。外から入ってくる直線的な光を、障子に貼られた和紙によって、一瞬にして幻想的な淡い光の空間に変えてくれるからです。その障子が纏う光は、明るすぎず、暗すぎず、光の粒子の存在を感じ、曖昧な輪郭を持ち、そしてグラデーションのように優しくて、静謐な光です。そのような光に出会うとき、そのふるまいにいつも魅了されてしまいます。五感の全てでその光を感じ、凛とした美しさを感じる瞬間でもあります。障子に貼られる和紙の種類は色々なものがあります。よく使用している紙、糸入り障子の落水はその表情から光の濃淡をつくり、その濃の部分が影となり自らを際立たせています。影のつくりだすシルエットで物の形や芸を楽しむ、昔からの遊び「影絵」のように、障子の和紙に映し出された緑の木々や葉っぱを、想像力の世界で楽しむ。そんな影がつくりだす夢幻もまた素敵だなと思えます。
普遍的な美しさとは、人種、性別、国を超えた誰もが潜在意識の中にある共通の美しさです。
私たちの潜在意識は、深い部分で繋がっており、そこには共通意識が存在しています。この共通意識を捉え、思考ではなく、潜在意識の領域になるハートを使うことで、普遍的美しさをつくることができます。