深山知子一級建築士事務所・レトノ 深山知子一級建築士事務所・レトノ

深山知子一級建築士事務所・レトノ
鯖江の家

住宅における玄関アプローチは、茶室でみてとれる飛び石のような雰囲気で計画したいと思っています。茶室における飛び石とは、歩行の際に土や雨などから着物や草履が汚れないようにする為に置かれています。また足を止めることでそこにある庭の景色を楽しんだり、足元に注意が行くことで苔などの下草を楽しんだりします。
そうすることで徐々に茶室の世界観へと導かれていきます。茶室の世界では、茶室に入る前を俗世界と考え、そこへ向かうアプローチ(露地)で世俗の塵を払い、心身を清めるということです。
住宅のアプローチでもそのエッセンスを使い、外向きの意識から内向きの意識へとスムーズに移行できるように設計するのが望ましいと考えています。 コンクリートなどで直線的なアプローチをつくるよりも、飛び石などの自然界にあるそのままの形を使うことで、直感的な楽しさもあり、様々な気付きをもたらしてくれます。

パウダールームやバスの空間の質を高めることは、住宅全体の雰囲気を決める大切な要素です。素材選び、光の取り入れ方や量などによって雰囲気はガラリと変わります。そして、もう一つ重要なのは使い勝手の良さです。パウダールームとバスを中庭で一体化し緑を取り込みます。朝見る緑の些細な変化が心を癒し豊かにしてくれます。
柔らかい光や緑に満たされたパウダールームやバスは、毎日の身支度におけるストレスを軽減し、一日の始まりを気持ちの良い気分へと変えてくれるのではないでしょうか。

建具とは・・・部屋の仕切りや外部との仕切りに用いる、開け閉めすることのできる可動性の障子・襖・窓・戸などの総称のようです。建具はこの定義にプラスし、開閉する行為や行為を連想させることで、その先に広がる空間を想像し期待しワクワクさせることだと考えています。例えば玄関ホールから LDK に移動する時、その奥の植栽などの景色をどのように見せるかで建具の意匠は決まります。ガラス框戸で一瞬にしてクリアーな景色が見えてしまうと、建具を開けるという行為によっての感情の動きは少ないかもしれません。一方格子戸を用いると格子越しの景色が見え、そして格子戸を開け放つと視線の先にはクリアーな景色が広がります。使うことで、直感的な楽しさもあり、様々な気付きをもたらしてくれます。

行為を伴う段階的な感情の移行が外の景色をより美しく見せてくれます。
格子戸は開口率、開口の縦横のバランス、桟の太さ、組子の凹凸の深さによって景色の見え方が変わります。先にも述べましたが建具の最大の魅力は、開けるという行為を伴う期待感、ワクワクにあります。建具の魅力をより感じるには、空間の空気感、目線の先にある景色、情報がバランスよく操作されていること大切です。