深山知子一級建築士事務所・レトノ 深山知子一級建築士事務所・レトノ

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2023.4.30

アトモスフェア(空気感)ぺーター・ツムトア

アトモスフェア(空気感)の著者であるぺーター・ツムトアは、1943年スイス、バーゼルに家具職人の息子として生まれる。父の元で家具職人の修業後、バーゼルの工芸学校(Kunstgewerbeschule Basel)とニューヨークのプラット・インスティチュート(Pratt Institute)で建築とインダストリアルデザインを学ぶ。その後10年間、スイス、グラウビュンデン州で史跡保護の仕事に携わる。1979年よりハルデンシュタインにアトリエを構える。ハルデンシュタイン在住。
この本の題名、アトモスフェア(空気感)に惹かれました。薄くて読みやすく書かれていましたが、内容はとても興味深く建築の深遠さを語る内容で私の潜在意識の中に響く感覚を覚えました。ペーター・ツムトアは設計するにあたり、以下のことを大切にしています。
1,建築の身体
2,素材の響き合い
3,空間の響き
4,空間の温度
5,私のまわりの物たち
6,冷静と誘惑のはざま
7,内と外の緊張感
8,親密さの諸階段
9,物に射す光
10,環境としての建築
11,整合性
12,美しい姿
この1から11の内容は、一つ一つ具体的に書いてあり設計者としてとても共感できました。私がもっとも惹かれたのは最後の「美しい姿」という12項目です。本文にはこのように書いてありました。
【整合性はある、いろいろな物がぴたりと調和している。だがそれからじっくり眺めてみて、私はこういうことがあります、確かになにもかもぴたりと合っている、しかし美しくない!と。ということは、やはり最後には形をじっと見ているのです。(中略)しかし最後の段階で作品が美しくならなかったとき、私にとってという意味ですが―今あえて単純に「美しい」とだけ言いますが、美しさについては多数の書物があります―もしもその形が私の心を動かさなかったら、その時には私はまたはじめに戻って、一からやり直すのです。したがって、私の最終章といいますか、私の最終目標は、おそらく「美しい姿」ということになるでしょう。】
この12の内容を実践しているからこそ、この本の題名であるアトモスフェア(空気感)を建築に具現化することが可能なのだと思いました。そして、その建築からある種の神聖さ、世界観を感じるのだと思います。人間の本質である霊的な部分の感じる力、感性がとても重要だと感じました。

「Don’t think, feel!」